溶連菌咽頭炎への抗菌薬、10日間から短縮可能?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/27

 

 本邦では、『気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(改訂版)』1)において、A群溶血性レンサ球菌(GAS)が検出された急性咽頭・扁桃炎に対して、抗菌薬を投与する場合にはアモキシシリン内服10日間を検討することが推奨されている。ただし、海外では臨床的な治療成功については、短期治療(5~7日)が10日間の治療と同等であるいう報告もあり、短期治療の可能性が検討されている。

 2022年にニュージーランドで実施された抗菌薬適正使用の取り組みの一環として、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間の短縮が、地域的に促進された。この介入により、抗菌薬の投与期間が10日間から5日間や7日間などへ短縮されるようになったが、治療成績に及ぼす影響は明らかになっていなかった。そこで、Max Bloomfield氏(Awanui Laboratories、Te Whatu Ora/Health New Zealand)らの研究グループは、後ろ向きコホート研究により治療期間の短縮の影響を検討した。その結果、治療期間を短縮しても治療成績に悪影響はみられなかった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年6月6日号に掲載された。

 本研究では、ニュージーランド・ウェリントン地域の検査所において、咽頭ぬぐい液培養によりGAS陽性と報告された患者のうち、報告時点で抗菌薬が処方されていなかった患者を対象とした。対象患者を2022年の抗菌薬適正使用の取り組みの実施前と実施後で2群(介入前群851例、介入後群1,746例)に分類し、抗菌薬治療期間、GAS再陽性、再治療、予定外入院、感染に関連する入院、家庭内感染、急性リウマチ熱について解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・抗菌薬10日間治療の割合は介入前群68.7%、介入後群41.0%であった。5日間治療はそれぞれ2.4%、21.2%であった。抗菌薬非投与はそれぞれ24.9%、28.0%であった。
・主な抗菌薬の内訳は、penicillin Vが介入前群75.9%、介入後群80.9%であり、アモキシシリンがそれぞれ19.4%、11.1%、セファレキシンがそれぞれ0.9%、3.8%であった。
・介入前後の治療成績は、いずれの評価項目も両群間に有意差はみられなかった。介入前後の治療成績は以下のとおり(介入前群vs.介入後群、調整オッズ比[aOR]、95%信頼区間[CI]、p値を示す)。
 -GAS再陽性:3.5%vs.2.7%、0.78、0.48~1.25、p=0.30
 -再治療(抗菌薬再処方):12.8%vs.12.9%、1.02、0.79~1.31、p=0.88
 -予定外入院:0.1%vs.0.5%、3.98、0.50~31.84、p=0.19
 -咽頭・頭頸部感染による入院:0.0%vs.0.2%
 -家庭内感染:6.3%vs.6.5%、0.96、0.69~1.36、p=0.86
 -急性リウマチ熱:両群0例
・治療期間別にみた再治療割合は、抗菌薬非投与の集団で高い傾向にあった。各治療期間の再治療割合は以下のとおり。
 -10日間:11.4%(参照)
 -7日間:11.7%(aOR:1.01、95%CI:0.59~1.73、p=0.98)
 -5日間:12.7%(aOR:1.10、95%CI:0.75~1.64、p=0.63)
 -非投与:15.6%(aOR:1.80、95%CI:1.26~2.55、p<0.01)
・治療期間別にみた家庭内感染割合は、5日間治療の集団で低い傾向にあった。各治療期間の家庭内感染割合は以下のとおり。
 -10日間:7.0%(参照)
 -7日間:6.2%(aOR:0.81、95%CI:0.40~1.65、p=0.57)
 -5日間:4.0%(aOR:0.52、95%CI:0.28~0.97、p=0.04)
 -非投与:7.1%(aOR:1.04、95%CI:0.64~1.68、p=0.89)
・GAS再陽性の割合は、治療期間による差はみられなかった。

 本研究結果について、著者らは「本コホートでは、GAS咽頭炎に対する抗菌薬治療期間を短縮しても、治療成績に悪影響はみられなかった。また、他の研究では短期治療によりGASの除菌率が低下することが報告されているが、本研究では短期治療により家庭内感染は増加しなかった。これは新たな発見である」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)